方文山の「青花瓷」
北京を去る前にお友達の一人が方文山の本、「青花瓷」をプレゼントしてくれました。
方文山(ビンセント・ファン)は、周杰倫(ジェイ・チョウ)の詩を多く書いている作詞家で、その強面からは考えられない繊細な詩を書きます(失礼な!)。
おそらく中華圏で今一番の作詞家ではないでしょうか。方文山を有名にしたのは、方文山の詩とジェイの曲からつくられる「中国風歌曲」(中華風ポップス)という世界です。
方文山がつくる「中国風」の世界は中国の豊かな歴史を歌詞の中にちりばめているものです。唐代や宋代などの漢詩の世界や故事にまつわる美しい表現、押韻などの文学的な技法を取り入れて作詞します。
方文山はジェイ以外のシンガーにも歌詞を提供していますが、この数年中華圏のいろんなシンガーがジェイと方文山のような「中華風ポップス」を歌い始めました。
私が初めて聞いたジェイ&方文山の歌は「髪如雪」。まだ中国語はあまり分かりませんでしたが、歌詞カードを見るとその雰囲気はわかります。
いただいた本のタイトル、「青花瓷」もジェイの曲のタイトルの一つ、中国では青い花模様の染付けの景徳鎮で、長い歴史があります。方文山の歌詞を読むには、中国の文化や歴史を多少は知っていた方がより奥深さを体験できます。
方文山の詩の世界を少しだけ紹介します。漢字表現の美しさを楽しんでいただきたいので、日本語訳は書きません。
例えば、「東風破」のサビの部分:
誰在用琵琶弾奏 一曲東風破
楓葉将故事染色 結局我看透
なんだか琵琶を弾いている人が浮かんできませんか。
また、「菊花台」では、
你 的涙光 柔弱中带傷 惨白的月弯弯 勾住过往
夜 太漫长 凝結成了霜 是誰在閣楼上 冰冷的絶望
とあります。字を読むだけで抒情的で淋しげな絵が浮かびませんか?
「髪如雪」のサビの部分もとてもきれいです。
你髪如雪 凄美了離别 我焚香感動了誰
邀明月 譲回億皎洁 愛在月光下完美
古典を美しく操るを方文山ってどんな人なんでしょうか。
方文山は大学の先生でも、文学者でもありません。来年40歳、作詞家としては10年程度のキャリアです。高校を出てから作詞家となるまでは、新聞配達をしたり、工場で働いたりと生活は安定していなかったようです。でも映画が大好きで、さらに相当な読書量があったのでしょうね。
私たちの大学時代は「ニート」なんてことばはまだなく、「モラトリアム - 執行猶予期間」という言葉が流行っていて、大学生や若者は自分の時間を謳歌していました。おそらく日本のどの世代の人よりものびのびした青年時代を送ったのでは。
就職しようと思えば就職できたし、卒業後海外に行って1,2年過ごすこともできました。就職せずに「家事手伝い」という身分もあったし、アルバイトしながら夢を求める人もいました。
彼は「モラトリアム」の間、自分の夢に向かって走り続けていたのでしょうね。
今は、内定取り消しや派遣切りなどたいへんだと思います。夢のある人はどうか暖め続けてください。






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